| 雑感
勉強会運営について考えたこと
私事ですが、2012年2月より毎月1回(平日夜)に静岡市にて、「Knock! Knock!」というWeb制作者向けの勉強会を主催しています。また、2010年からいくつかのセミナー/勉強会の運営に携わってきました。その中で感じたこと、気をつけていることなどをまとめておこうと思います。
2012年春・夏の静岡はセミナー / 勉強会が百花繚乱
私が参加したものだけでも、2012年4月〜7月の間に静岡市で多くのセミナー / 勉強会が開催されました。数年前までは、静岡にWeb制作者向けの勉強会はほとんどありませんでしたので、こういった機会が増えたことは非常に嬉しく思います。
- 第1回静岡アクセス解析勉強会(2012.4.7)
- 第2回WordBenchしずおか(2012.4.14)
- TalkNote Vol.4(2012.4.28)
- CSS Nite in SHIZUOKA, Vol.3(2012.5.26)
- [UX Shizuoka] HCDワークショップ フィールドワーク(2012.6.9)
- TalkNote Vol.5(2012.6.30)
- [UX Shizuoka] ペルソナ・シナリオ法(2012.7.28)
セミナー/ 勉強会が増えた一方で、運営について気になることもあります。それぞれ運営ポリシーがあると思います。余計なお世話は重々承知しています。私の考えが常に正しいわけではありません。その上で、私の考え方が少しでも何かの参考になれば幸いです。
※ 偉そうに書いていますが、ほとんどのことはCSS Nite in SHIZUOKAの運営を通して、CSS Nite主宰の鷹野さんから教わったことです。いつでも非常に感謝しています。
誰のためのセミナー / 勉強会なのか
参加者の利益
もちろん最優先なのは、参加者の利益・満足度です。イベント趣旨に賛同し、貴重な時間を使って参加して下さった方に、何かプラスになるものを届けることが使命だと考えます。参加者から「良かった」「勉強になった」「また参加したい」と仰っていただけると、主催者としてもやって良かったと思えます。
また、自分が参加者としてセミナー / 勉強会に参しだしたときを振り返ると、セミナー内容のほかに「出会い」と「刺激」という要素が強かったと思います。
当時は会社員でしたが、社外との交流はほとんどなく、閉ざされた世界に居ました。環境が閉鎖的だと、マンネリ化や言いようのない閉塞感におそわれます。そんな中で、セミナーを通じて同業他社の方と出会い、外の空気を感じることが刺激となりました。つまるところ、まだまだ全然足りてない自分、を思い知らされたわけです。それがキッカケで、勉強もしたし、交友関係を広げる努力もして、何とか今の自分があります。
そういう意味でも、セミナー / 勉強会はそこに集まった人の化学反応が大事だと思います。そんな場を共有することも、参加メリットと感じて貰えたら…と思って運営しています。
スピーカー(講演者)の利益
スピーカー(講演者)の利益も大切です。講演を生業とする方のセミナーですと講演代も10万円〜。なかには100万円〜という方もおられます。参加費も数万円〜が相場です。他方で私が運営に携わるセミナー / 勉強会では、参加費は数千円、スピーカーにお支払いできる講演代も非常に薄謝です。準備にも多くの時間が必要です。本番はもちろん、移動を含む拘束時間まで含めると、講演はボランティアと言えます。
そういった条件で講演を引き受けてくださる方に、金銭以外でもお返ししたいという気持ちが強くあります。Web制作のセミナー講師は、現場の制作者である場合が多く、セミナーのページが講演実績=宣伝材料になるように心がけています。
スピーカーが好印象を持ってイベントが終了すると、次を頼みやすくなります。まわりの方を紹介してくださることもあります。逆のパターンだと…考えるのも恐ろしいです。イベントの運営上、大事な評価ポイントでもあります。
スポンサーの利益
スポンサードしてくださる企業さま/個人の方は、何かしらの思いがお有りです。純粋に支援してくださる場合もありますし、宣伝・広告が目的の場合もあります。いずれにせよ、スポンサー様の期待に応えることが、次のスポンサードにつながることは確かです。意外と疎かにされがちですが、大事なステークホルダーです。
運営者の利益
現状のセミナー / 勉強会運営は完全にボランティア活動です。もちろん無報酬。全体収支がマイナスにならなければラッキー。私が主催している勉強会においては、ある程度の赤字は織り込み済みというスタンスです。運営者の利益は、最後の最後でおこぼれにあずかれれば儲けもの、という感覚です。
運営上で気をつけたいこと
イベントの環境
イベントのその時間は一度きりのもの。その時間をできる限り快適に過ごしていただくことに気を使うべきだと考えます。会場の明るさ、温度、マイクボリュームなどはもちろん、ネット環境(無線LANの有無、携帯の繋がりやすさ)なども重要です。
セッションのタイトルと内容
タイトルと内容がマッチしてないセッションがときどき発生します。事前に告知されているトピックを期待して参加したところ、告知と実際の内容が違えば満足度は下がります。予想を超えた内容で大満足ということもありますが…。このあたりは、スピーカーもさることながら、主催者がハンドリングする必要があると思います。
また、サービスやプロダクトを批判する内容も時々あります。往々にして勘違いや調査不足なことが多く、全体として気分の悪い発表になりがちです。うまくいかなかった事例を紹介するときは、「自分の準備不足でこういう失敗をしたので、みなさんもご注意ください」というロジックで話されるといいかと思います。
運営体制
参加者・スピーカー・関係者に楽しんでもらえるようにセミナー/勉強会を運営するには、スタッフ(協力者)の人数も必要です。会場内の準備や対応、受付、案内、スピーカーの接待etc...と意外にやることがあります。感覚値ですが、参加者10人に1人くらいが適正化かと思います。当日なんとかなる、とか思わないことです。
また、挨拶、案内、送り迎え、接遇など、礼儀的なことも意外に疎かになりがちです。自分以外はゲスト(スピーカー、スポンサー、スタッフも)です。過度なゲスト扱いもNGですが、マナーは大事ですよね。
最後に、ときどき感じるのですが、主催者の「内輪の盛り上がり」もNGだと思います。よく参加してくださる方が自然と集まるのは当然ですが、初めて参加した方のなかには馴染めず不快に感じることもあります。主催者は率先して「内輪の盛り上がり」で楽しむのではなく、「壁の花」になりがちな初めての人、馴染めていない人をうまくエスコートしたいですよね。
機会費用という考え方
機会費用という考え方があります。機会費用とは、「選択されなかった選択肢のうちで最善の価値(Wikipedia)」です。多くの場合、セミナー / 勉強会の参加は必須ではありません。「もしセミナーに参加せずに○○していたら、△△円の利益が見込めた」という選択肢がありえます。それは「セミナーに参加することで、△△円の利益を放棄した」とも考えられます。
つまり参加費が500円(私主催の勉強会です)だとしても、移動と勉強会の時間が計3時間とすれば、「500円+3時間で稼いだであろう利益(+交通費など)」が参加コストとして考えられます。時給1,000円でも3,500円。それが10人集まれば35,000円です。もっと大規模なセミナーならスゴい金額になります。つまり、無料セミナー・格安セミナーが、価格設定から「粗悪セミナーでもしかたない」とはならないはずです。
まとめの代わりに
散々苦言を呈してきましたが、これは自分への戒めでもあります。できていないことばかりで、恥ずかしい限りです。ここで偉そうに言ったからには、少しずつでも改善していきます。
重ねて申します。セミナー / 勉強会が増えたことは大変嬉しいことです。それぞれの勉強会が、発展していただくことを祈っております。