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Web屋の言い分、クライアントの言い分

先日、みんビスについてのブログを受けて、某氏がFacebookで下記ように発言されていたので、私なりに思うことをまとめました。改めて立場を明らかにしておくと、私はWeb制作会社サイドの人間です。意見に偏りがあれば申し訳ありません。クライアントもWeb制作者も中小企業・個人商店向けを想定しています。

多くのWeb制作系のブログの論調がWeb屋がなくなる?にはじまり、最後はWeb屋が必要、となっている。でも、本当にそうなんだろうか?Web制作会社からはよく「クライアントはわかってない、知識がない、駄目だ」と言い、クライアント側は「Web制作会社に騙された」と聞くこともしばしば。本当のボタンの掛け違いは今の現場にあるんじゃないだろうか。というところを誰か考察して書いてくれると面白いのに。

制作会社の言い分 「クライアントはわかってない」


Web制作は歴史が浅く、トレンドや技術の移り変わりが早い業界です。最近のトピックスはHTML5やスマートフォン対応などの技術や、Facebookなどを利用したソーシャルマーケティングなどでしょうか。こういった最新トピックスは、話題が先行しがちです。そして仕入れた知識は使ってみたいのが技術者なのです。

先端技術やトレンドな施策を使ってみたい制作サイドにとって、それらに理解を示さないクライアントは「わかっていない」と感じるのかもしれません。しかしクライアントのビジネスにとって、ホームページの占める割合はWeb屋が思うほど大きくないのが現実です。クライアントは技術やトレンドに関心がないのが普通ですよね。ビジネスにどうプラスになるかが重要ですから。

クライアントのWebリテラシーが低いかと言えば普通だと思います。エンドユーザーやクライアントの感覚こそ、一般のリテラシー水準です。Web屋は専門分野なので高くてあたりまえ。つまりWeb屋のリテラシーだけが高めで、その基準で物事を考えるのは独り善がりになりかねない。ましてWebリテラシーが高いことが偉いわけではなく、必要なレベル(クライアントやエンドユーザーの水準)でものごとを計ることが必要です。クルマの運転も誰もがF1レーサーほどのテクニックは必要ないのと同じです。

※ ちなみに自己弁護のようですが、制作サイドは決して悪意や興味本位ではなく、純粋に技術的優位性や先端事例(あるいは競合事例)の施策として、まじめに、真摯に提案しています。ただ、それをクライアントが求めていないだけなんです…。

クライアントの言い分 「Web制作会社に騙された」


多くのクライアントは制作会社を「インターネットのプロ」と考えています。これには「制作のプロ」以外に、「パソコンのプロ」「ネットビジネスのプロ」なども含む、インターネットのことなら任せて安心な人です。これらの要望に答えるのはなかなかにヘビーです。Web制作会社のなかには「コンサルやマーケティング戦略は広告代理店に頼んでくれ」と考えているところもあります。

クライアントは制作会社を「インターネットのプロ」と思い、提案されるままにホームページを立ち上げます。カッコいいページができたことに最初は満足しますが、いつまで経っても思ったような効果が出ないことに不安を感じてきます。制作会社はたまに訪ねては、「トップページを直しましょう」「ブログをやってみましょう」などと提案します。それでも施策の成果がでる気配もない。やがて他の制作会社がリニューアル提案を持ってくると…。以下、はじめに戻ります。そしていつしか騙された!と感じてしまうのでしょう。

制作会社の多くは「制作のプロ」です。ホームページの技術やデザインについては多くを語れます。しかしインターネットでビジネスするプロではなく、クライアントのビジネスや業界についての知識も浅い場合が多いのです。F1マシンを作るプロは、運転のプロでもチーム運営のプロでもないのです。自戒を込めて厳しく言えば、一生懸命やってるけど「その程度の知識で、したり顔でホームページを提案」しています。それで思い通りの成果がでるほど商売は甘くないですよね。

ボタンの掛け違い、さらに“その先”に

クライアントは制作者を「インターネットのプロ」と考え、制作者は自分たちを「制作のプロ」と考えている。制作者についての認識の違い=求めるものの違いが生じていると感じています。もちろん多くの制作者はインターネットのプロでありたいと考えています。そこに至るまでには、経営やマーケティングなどの専門外の領域を学び、日々進化する制作ノウハウにも対応し続けなければいけません。これは長い道のりです。

また、「インターネットのプロ」が真にクライアントの役に立とうとすれば、Webが役立てることを探してより深くクライアントのビジネスを知り、顧客ニーズを考え、密接に関わろうとするはずです。多くの中小企業・個人商店にはWeb担当者はいませんので、ほとんど外注のWeb担当者になるようなものです。これはもう果てしない道のりです。

“その先”を考えよう


話を発端であるみんビズに振って、晴れて大団円といきたいところです。2011.9.14のブログにも書いたとおり、みんビズでWeb屋はなくならないし、むしろ上手く使ったらいいと考えます。Web屋が「インターネットのプロ」として、みんビズが提供してくれるものに乗れるところは乗っかり足りないところを補う、それがWeb屋もクライアントもハッピーになれる道だと考えます。

不要なコストを削り、必要なところに投下するのがビジネスの原則です。みんビズがマッチするようなクライアントのニーズを無視し、これまでのWeb屋の常識に固執するなんてナンセンスです。

まずは今までホームページがなかった企業・商店にも裾野が広がる世界を想像し、そこでどんなWeb屋の仕事が生まれるか考えてみましょう。重厚なボリュームがなくても、ホームページは成立します。Web屋も街角に出ていきます。やりたいけど手が回らなかったことにチャレンジできるかもしれません。仕事にならないと思っていたことが、ビジネスとして成立するかもしれません。

「インターネットのプロ」の仕事は制作だけではありません。デザインやHTMLコーディングなどみんビズが肩代わりしてくれるコストを、コンテンツ制作やマーケティングに投下してみましょう。写真やテキストなど、コンテンツこそがWebサイトの命です。そして数千円からでもリスティング広告に出稿してみましょう。広告効果だけではなく、サイトについての多くの気づきを与えてくれます。Webから離れてDM発送やショップカードを作ってもいいかもしれません。これらはの施策はクライアントとのコミュニケーションを促します。

HTML5やFacebookページにワクワクするなら、みんビズにもワクワクしないともったいないですよ。


プロフィール

矢部 靖人(hamnaly)

いくつかの制作会社でWeb制作やDTPから営業まで経験し、2010年に独立。現在はhamnaly(ハンナリィ)という屋号で、Web制作を中心に地元企業のWeb活用を応援する事業を模索中。理想は高く現実は厳しく、下請け制作を中心に生きています。Knock! Knock! 主催。

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